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2011年3月

2011年3月30日 (水)

何かを得る為には、何かを捨てなければならない時もある

ちらほらと言っておりましたが、この記事をもってこのブログは1年間休止させていただきます。

理由は、管理人の大学受験のためです。この1年も忙しかったですが、自分の今の能力ではあと1年がもっとキツイものになると判断しました。

正直、私の家庭は楽な方ではありません。第一志望は国立大にして、私立もセンターで全てとれるくらい……と分不相応な望みを持っています。

このブログは私にとって本当に大切なもので、辛いことがあったときも、皆さんにお見せする感想で、少しでもそれ自体が持っているよさをわかって欲しいと思いながら書いていると元気が出てきました。時には、分不相応に書けないときもありましたが、そんな時も含めて、大切な思い出です。

「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」シリーズだけは……とも言ってましたが、考えた結果、そんな勝手なこともないんじゃないかと思いました。そのシリーズのほかにも読んでいる作品はあるのに、それだけを中途半端だからという理由だけで書き続けるのは、このブログを書き続けたい私のエゴです。更新率が低くなっても書けるときに書いた方がいいんじゃないかとも思いますが、中途半端に何かをやるよりは、この1年、頑張ってみたいと、そう決意したのです。

今迄、こんなブログを見にきてくださったり、感想をリンクページにはってくださったり、月並みな言葉ですが本当にありがとうございました。他の感想サイト様ともあまり接点をもてませんでしたが(勝手に尊敬しているサイトしかありません……)、大学生となった暁には、できたらオフ会にも参加してみたいです。

絶対に合格して、皆様にその旨を報告します。ですので、勝手なお願いだとはわかっていますが、あと1年待っていてください。待っていて「欲しい」のではなく、待っていてください。

それでは、重ねてありがとうございました。これを読んでいる貴方に最大の感謝をこめて、ここで終わらせてもらいます。

                                                雨宮詩歌

2011年3月23日 (水)

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん5 欲望の支柱は絆

数年前の誘拐事件の被害者・まーちゃんと、加害者の息子であり、被害者でもあるみーくんの話。何者かによって骨を折られ、懐かしの地下室に閉じ込められることになったみーくん。未だ密室屋敷に囚われている伏見を助け、まーちゃんを直すために、何とか密室屋敷へと戻ろうとするが……

誰が普通で、誰が普通じゃないのか。普通からくる異常性とその反対が楽しかったです。勿論、ずっと普通の子もいたりしましたし。

みーくんがどんなに軽口を叩こうとも、嘘をつこうとも、バキバキにされた体の痛みとかつてのトラウマは残っているはずなのに、懸命に足掻く姿に感動した。暗い中で見る夢は、過去を刺激するような悪質な妄想で、精神が蝕まれていくような状況で、彼はよく歩き続けたと思う。

だからこそ、密室屋敷に戻って直ぐに、殺人事件が進行していることや、伏見が閉じ込められているという厳しい現実にはひいてしまいましたが。人を壊したことはあっても、殺したことはないんだ、と鍵が行方不明な部屋に閉じ込められる伏見を何とか助けようとするその姿こそが本来の彼なんだと思う。いつもは、色んな嘘で塗り固めているから中々見えないけれど、甘いといってもいいレベルで優しすぎる。

伏見救出イベントの次の犯人当てで、本来ミステリーものというのは解決するはずなのに、このシリーズは終わらないところが辛いよね。むしろ、犯人を糾弾することで、目を背けていたはずの事実を浮かび上がらせ、犯人の異常性を肯定してしまうようなものなんだから。正常な思考のゆえの異常性って本当に怖い。元からちょっと変わっている誰かさん達の方がおかしいはずなのに、それが逆転してしまうんですから。といっても、その「正常」は何?っていう話でもあるんですが。

益々みーくんに依存する伏見とのラブ会話に唯一ニヤニヤしたりしながら、みーくんが引き起こしてしまった事件には、複雑な思いを抱かざるを得ない。悪意って、重い。

しかし、大江湯女はいい性格をしていますね。彼女の甘さが届く範囲は狭すぎるから、みーくんとはそこが違って怖い。読者としては、みーくんとの会話は純粋に楽しいんでいいんだけどね……

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嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん4 絆の支柱は欲望

数年前の誘拐事件の被害者・まーちゃんと、加害者の息子であり、被害者でもあるみーくんの話。幼児向けの番組で、みーくんの顔を書こうとしたまーちゃんは、自らの矛盾に無自覚に気付き、壊れた。本来みーくんではない「僕」をみーくんと認識している、その破綻に耐えられなかったのだ。まーちゃんを直すために、みーくんは元の家へと向かうが、そこは大江家なる一家が引っ越してきていて……

嘘でがんじがらめになっているから、簡単に壊れてしまうみーくんとまーちゃんの関係を、何とか繋ぎとめようとするその刹那さが辛い。みーくんではない僕とまーちゃんの関係は、ひどく遠く、嘘をつき続けることの罪と罰を思い知らされた。

伏見柚々をお家探索メンバーに加えたりして、数年ぶりに戻った家には新たな一家がこしてきているという、当然のようでいてちょっと不気味な話。なにせ、みーくんの家というのはかつての誘拐ごっこが行われた現場でもあるのですから。ですが、話を聞いてみると、どうやら大江家のお母さん・大江景子が事件のファンだということで、その延長上で、みーくんと伏見はもてなされ、屋敷探索の権利の代わりに、夕飯への参加を提示されます。

大江家の他の面々というのは、2人の使用人、お父さん、息子1人、娘3人ということですが、閉鎖的な環境のおかげで、息子さんや娘さんがどこか皆おかしい。親の言うことを犬のように聞く息子、みーくんにそっくりな娘、全ての物事を反対に言う娘、普通のようで常識が欠如している娘。1つ1つの破綻は見過ごせるはずだったのが、あれよあれよという間にみーくんと伏見にもお泊りが提示され、そして一夜あけると、人が死んでいたのは……誰が悪いんだろうか。

屋敷は施錠され、窓には鉄格子が嵌っている。いわば、犯人とその他の人が仲良く密室にいるということで、誰が犯人なのかという雰囲気が漂うのは当然の話。ただ、大江家の面々というのは皆どこかおかしいから、普通のことを言っているはずのお父さんの欲望が透けて見えたりして、ゆるやかに破滅に向かっていくんですよね。精神的にも物理的にも磨耗が進み、人の醜さが浮かび上がってくるのが怖い。

そんな中でみーくんはともかく、伏見はごく普通の精神の女の子なので、誰かが殺され、自分たちが静かに迫害される状況が怖くて仕方がない。それを何処か冷静にみて、「ああ、これが普通なんだ」と実感するみーくんが印象的でした。その不安さをみーくんに依存したりして、中々ラブな雰囲気が流れつつも、わざとか意識的にかそれを回避するみーくんにニヤニヤ。そういえば、この子たちは高校生なんだったという話。

みーくんの浴衣姿にも想像からニヤニヤさせてもらいました。えーっと、情報を集めるとみーくんは割と線が細い中性的な感じなんでしょうかね? 凄く見てみたかった(本気)。

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2011年3月19日 (土)

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん3 死の礎は生

数年前の誘拐事件の被害者・まーちゃんと、加害者の息子であり、被害者でもあるみーくんの話。今日は楽しいバレンタイン!ということでまーちゃんから年期の入ったチョコレートを貰ったりして、いつもどおりの日々を過ごすみーくん。命の危険を避けるために、まーちゃんにダイエットを薦めたツケでジョギングに付き合い、案の定寝てしまったまーちゃんを背負った帰り道、死んだはずの妹に会った。奇しくも町では惨殺死体事件が発生しており、妹は何故か血まみれの格好をしていて……

妹可愛いよ妹! ただし、自分の妹にはしたくないですが。モテモテっぷりを示すみーくんにまたもハーレム要因が増えましたね……嘘と本当で半々くらいでしょうか。

冷蔵庫? なにそれ美味しいの? とばかりに何年も常温保存をしたチョコレートを笑顔で差し出すまーちゃんの無自覚鬼畜っぷりは半端じゃないです。断ったりしたら血みどろの惨劇が繰り広げられるし、食べたら体が不調を訴えてきそうな状況で、できるだけ最善を尽くそうとまーちゃんの体に言及したりして、その結果、妹と奇跡の再会を果たすとは、みーくんも不運なものですね。いや、これも裏返しかな?

まーちゃん以外のチョコレート要員にもニヤニヤして、みーくんのジゴロっぷりを堪能するのも束の間。目下行方不明中のはずの腹違いの妹は、みーくんが兄ではなければ制御できないような暴れ馬ですが、暴力や暴言でさえもまーちゃんに比べたら……と読者にまで低いハードルを暗に強制して、妹の可愛さを描く作者は流石ですね。色々感想が間違っている気がするのは気にしないよ! そして、包丁を突きつけられてなお、大人な対応なみーくんも流石。まーちゃん経験値がだいぶ溜まっている恩恵でしょうか。

そして、動物が惨殺される事件だったはずが、殺人事件に発展し、その被害者がみーくんが所属する風紀委員でバカップルを運営していた委員長だったわけで。恋人の副委員長が人間として大切なものを失ってしまうのを眺める一方で、まーちゃんを巻き込まないように妹と交流をはかりつつも、後輩の風紀委員とも曖昧なお近づきをしたり、部活動に励んで部長と交流したりとみーくんの学校での立場というのにスポットがあてられた巻でした。まあ、女の子とあまり仲良くしすぎるとまーちゃんから愛の鉄槌が飛んできたりするので、学園生活を堪能はできませんが。

しかし、妹が最後にみせた信頼が今回は1番印象的でした。身勝手でもあり、すごく純粋でもある子なんですよね。色々な行動も、最後の言葉を読むと許してしまえる気がするから不思議です。勿論、まーちゃんのベクトルがずれた愛の一途さも印象的でした。

ちなみに、私はアマチュア無線部部長の伏見柚々派なんですが、彼女の魅力については、4・5巻でまた。

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 3 死の礎は生 (電撃文庫 い 9-3) Book 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 3 死の礎は生 (電撃文庫 い 9-3)

著者:入間 人間
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嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん2 善意の指針は悪意

数年前の誘拐事件の被害者・まーちゃんと、加害者の息子であり、被害者でもあるみーくんの話。前回の事件での傷から病院に入院することになったみーくん。当然のように、花瓶で頭を殴って自主的に病院に入院したまーちゃんと一緒に今日もバカップルっぷりをくりひろげるのだった。だが、みーくんの元彼女がたずねてきたり、まーちゃんが死体をみつけたりして……

歪みすぎて軸がおかしくなったバカップルっぷりは、一抹の切なさを含み、所々見える「みーくん」の正体には辛くなります。今、切なさを刹那さと変換ミスしたんだけど、2人の関係は刹那の幸福を追い求めたようなものなんだよなとも思った。そう考えると、案外有益な言葉遊びだったりして。

元彼女の長瀬というのは、男らしい自分の名前が嫌いな、普通な女の子なんだけど、彼女とみーくんが付き合っていた過去というのが、すなわちみーくんがみーくんじゃなかった頃のお話なので、失ってしまった幸せと確かにあったはずの愛情が苦しい。長瀬は、色々と不憫な子だ、本当に。胸に抱え続けた罪が断罪されたことは、案外彼女にとってもよかったんじゃないかな。始まりがどうであれ、終わりがどうであれ、みーくんとの関係性は悪いことばかりじゃなかったはず。

長瀬の妹ともイチャコラ(誇大表現)して、まーちゃんの奇行確率を積み重ねるみーくんですが、結局、帰るところはまーちゃんの所というのがやっぱり、ね。みーくんの献身的すぎる行動が裏返って哀しい。そして、色んな記憶に蓋をしたまーちゃんが、無意識に悪意に惹かれて行動するというのが運命のめぐり合わせを示すようで、それってやっぱり怖いですね。

死体が、病院で目下行方不明中の女の子なのか否かをみーくんとまーちゃんで探しにいくときも、何もわかっていないからこそ無邪気に振舞うまーちゃんが死体にまで「浮気しちゃ駄目!」と嫉妬するのがブラックジョーク風味。死体を運んでる人を見たと無邪気に報告するまーちゃんを、裏から守ろうとするみーくんはカッコいいなあ。

まーちゃん第一のバカップル精神を持ちつつも、嘘だけどで誤魔化し続ける甘さと優しさの入り混じりがみーくんを苦しめる要因の1つではあるのだけれど、捨てきれないものをもちながら、立ち上がる、なんてきっとみーくんに言わせたら、曖昧な言葉と嘘だけどで終わっちゃいそうですが。

みーくんの「本音」をいつか聞きたいけど、それこそが物語の終わりなんでしょうかね。

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 善意の指針は悪意 2 (2)(電撃文庫 い 9-2) Book 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 善意の指針は悪意 2 (2)(電撃文庫 い 9-2)

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2011年3月16日 (水)

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸

主人公ことみーくんと同じ誘拐事件の被害者である御園マユことまーちゃん。そんなみーくんとまーちゃんが住む町で、かつてのような誘拐事件と連続殺人事件が起きていた。みーくんはまーちゃんと再会を果たし、キャッキャウフフの恋物語がはじまるわけもなく、まーちゃんが何処からか連れてきて監禁していた兄妹とみーくんが会ったことで物語は動き出していき……

再読。やっぱり、大好き。みーくんのひねくれたような言い回しと、でもそこに隠される真実は結論を知っていても、いや知っているからこそワクワクします。まーちゃんも相変わらずヤンデレの鏡ですね。

綺麗だけど、人を突き放すような態度で、同級生にも敬語……それがみーくんと再会してからは、みーくんの前だけで幼児退行して甘えまくるまーちゃんの姿が怖可愛い。みーくんが世界の中心、むしろ世界にはみーくんとまーちゃんしかいない!という態度をとる彼女は、数年前の誘拐事件の被害者で本人の自覚なしに精神に異常をきたしています。暗いところでは眠れず、愛情は憎しみの裏返しになる。みーくんに対しての言動も裏返してみると、ドロドロと深いものがたまっていて、それがひっくり返ってしまうと血で血を洗う騒動になるわけです。その上、非常に嫉妬深いのでみーくんがまーちゃん以外の女性と会うだけで、命の覚悟が必要です。

そんなまーちゃんに閉じ込められている池田兄妹は、意外とたくましいんだけど、そのたくましさの理由はみーくんが彼等と接触を持っていくにつれて見え隠れし、笑えないものではある。ただ、みーくんに対して懐いていく様子は純粋に可愛かった。お兄ちゃんが妹を必死で庇う姿にもホロリときます。

他にも、精神科医の恋日先生や、刑事のジェロニモさんなどみーくんの周りにあつまる女性というのは、基本的に美人だけど、どこか変わっている人ばかりで飽きさせません。幸か不幸か誘拐事件に関わってしまったみーくんは、連続殺人事件の容疑者にも入ってしまい、まーちゃんを救うために彼女の見えないところで色々と行動するのですが、彼女を救うための行動すら時に裏返るのが残酷。

みーくんは、作中では軽いですが、彼自身にのしかかる過去というのはまーちゃんよりも果てしなく奥が深い上に彼を支える人はいないし、彼自身望んでいません。「嘘だけど」で色んなことを誤魔化すその心中は……想像しただけで切ないです。

完結記念といいたいところですが、私は7巻と短編集までしか読んでいなかったので実はオチを知らなかったりします。というわけで、物語がどう決着をつけるのかが純粋に楽しみ。

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2011年3月14日 (月)

双つ龍は艶華を抱く

兄が急死したため、実家の老舗旅館を引き継ぐことになった松波聖。だが、彼に示されたのは紅葉組というヤクザと兄が生前結んでいた土地の売買契約の書類だった。代々引き継がれてきた旅館をこんなところで止めるわけにはいかないと相手にすがりつく聖。そこで、相手が出した条件は一定期間だけ聖に紅葉組の若頭とその双子の弟のオンナになれというもので……

同じBL界で例えるなら、一穂ミチ先生は恋愛を日常のそのすぐ先にあるものとして書いていましたが、この藍生有先生は体の関係のその先にあるものとして書いているようです。それはそれでいいんだけど、どうもこの話は3人の間に愛情が感じられず、だからといって体の関係に割り切るわけでもないのが好きじゃありませんでした。

断れない条件を出されてしまった聖はなすすべもなく双子の手の中に落ちていきますが、アンアン喘いだ直後に毎度毎度「でも、これは一定期間なんだから」だの「従順にしてれば相手も飽きるんじゃないか」だのと決意が大層なものすぎる。お前、ちょっと前に思考が飛んでたし、前にも決意してただろうが!と突っ込んでしまった。流されやすい受けというのとはちょっと違って、どうも行動と言動が乖離しすぎている気がしました。まあ、無自覚淫乱受けというのかな?

攻めズの双子の方がよっぽど筋が通っていると思いました。初期でやってることは脅迫ですけれど、ヤクザだのなんだの言うわりには聖に対して鬼畜じゃなかったなあ。言うことを聞きさえすれば基本的に約束は守るし、体も労わるし、欲しいものも大抵あげるって結構至れり尽くせりじゃないですかね。羨ましいかといわれれば、全くそんなことはありませんが。

しかし、聖と紅葉組の契約で、土地の売買契約については一区切りついたものの、今度は旅館のガラスが何者かに割られるという器物破損事件が度々起こるのですが、正直、犯人が馬鹿すぎるだろうとしか思えなかった。もう少し、手の込んだ仕組みをつくれないのでしょうかね。

BLものでありがちなのが、初め無理やり→でも相手のよさを知る→違う奴に押し倒されて気持ち悪いと感じる→そうか、俺あいつのことが好きだったのか!というパターンですが、この話は最後の部分がそうか、俺あいつらとの体の関係が好きだったのか!みたいに収まるので、後味が悪い。3人は、体の関係というわりには結びつきすぎているけれど、永遠に恋愛感情を持たないんだろうなと思いました。

個人的には、お兄ちゃんの義臣の方が好きでした。情に厚い兄貴のような奴で、結構いい人です。弟はヤンデレ臭がすると期待していましたが、その辺は中途半端で終わってしまったので残念。でも、1番駄目だったのは、主人公の聖の一貫しない思考だと思う。

双つ龍は艶華を抱く (白泉社花丸文庫BLACK) Book 双つ龍は艶華を抱く (白泉社花丸文庫BLACK)

著者:藍生 有
販売元:白泉社
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ボクらのキセキ

波河久則はほんの悪戯心から見知らぬ番号に電話をかけ、「未来の恋人」としていくつかのデタラメな予言をしてしまう。そして、数日後。ひょんなことから出会った三条有亜と出会い、一目惚れする。だが、彼女こそが久則が電話をかけてしまった相手だとわかって……

悪ふざけの相手に本気で恋をしてしまい、しかも何故か予言が当たってしまう。久則の慌て具合と必死さが楽しく、普通に自業自得ではあるんだけど、数年後にはきっと……とほんのりさせられた話でした。

予言があたっていくことで、電話が真実なんじゃないかと戸惑い、それを馬鹿にもしないで受け留めてくれる久則に有亜が惹かれる一方で、久則の実情といえば、犯人が自分だからである上に有亜に惚れてしまったから、なんて面白すぎる。嘘を吐く人は嫌いと言われていたら言いづらいよねなんてニヤニヤもしましたが、久則は馬鹿だけど真面目でいい子だなあ。いとこの正臣に冷静な突っ込みを入れられながら、真正面から有亜にぶつかっていく姿がかっこよかったです。というか個人的に正臣のキャラが大好きでした。クールでちょっと毒舌、でも優しい彼の話だけでも読んでみたい。

でも、久則の悪ふざけだったはずなのに予言があたり続けてしまい、その予言自体も進むにつれ、人が傷つけられるとか大きな話になっていくから怖い。何せ、最後は「2人が付き合ったら人を殺してしまう」ですからね。なんとか予言を回避しようと行動する中で、初めは言霊とか非科学的なものも考慮に入っていたのが、何者かによる悪意ある行為じゃないかという話になってきて、じゃあ犯人は……というのにワクワクした。

犯人は予言を知っていなければならないはずで、そうなると人数が限られるわけです。そんな中で犯人を捜す途中、その他面白そうなものも見つかっていたけど、この話はそれが主体じゃないのでスルー気味なのが残念。色々面白そうなのもあったのだけど。

一方、有亜の方も自分に身の覚えのない話を聞かされたり、どんどんと予言が現実的に感じられていくのが段々怖くなってきて、「もし」2人が付き合ったら「何かの間違いで」人を殺してしまうことが本当にありえてしまうんじゃないかと色々な事に迷う姿が上手かった。

でも、1番好きだなと感じたのは物語を読んだあとにわかるタイトルの意味ですね。ボクらが誰と誰を指すのかとか、キセキはどの漢字をあてるのかとか、物語以外のところでも楽しませてもらいました。

ボクらのキセキ (メディアワークス文庫) Book ボクらのキセキ (メディアワークス文庫)

著者:静月 遠火
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2011年3月12日 (土)

羽月莉音の帝国

革命部。それは、お金を稼いで、その果てには建国しちゃおうぜ!という見るからに怪しい部活だった。だが、羽月巳継の幼馴染・羽月莉音がその部の部長で、当然のように巳継、そして同じ幼馴染の折原沙織、春日恒太は入部することになった。だが、初めの仕事はなんと「借金返済」で……

経済小説にしてはキャラクター性に頼った商売をしすぎだと思ったけれど、1つの物語としてみるのなら悪くない。個人的には、どこまでも不憫な貧乳美少女・沙織が可愛かったです。

革命部とはいったものの、まずは金を集めなければならず、そして金を集めて商売するためには資本金が必要。という理屈でパソコンなどの部品を借金で揃えた莉音から出された初めの仕事は、1ヶ月に267万円返済。無理だろ!と突っ込みたくなるのは巳継だけではないのですが、莉音の初めは手広く、次は狭くの商売は何だかんだで上手かった。

革命部に元からいた柚先輩のまったく利益にならない自販機から始まり、結局は沙織の美少女っぷりを生かしてモデル業というところが、ちょっとキャラクター性に頼りすぎじゃないかと思った所以なのですが、その過程は面白かったです。モデル業にしても、特化していくにあたって必要な作業がきちんと書かれており、どんどんと膨れ上がっていく仕事がリアルでした。まあ、普通の高校生はそんなことできないだろうといし、結果的にハイスペック集団ではありますが。

それにしても、沙織が可愛い。貧乳を気にしているところもさることながら、巳継に対する献身的な態度が涙を誘う。なのに巳継は典型的鈍感タイプで、沙織の気持ちに気付けないんですよね。美少女といえども恥ずかしがりやで、本当はモデルなんかできるはずもないのに、巳継の為に革命部に所属し、巳継の為に我慢してモデルをやる姿が健気すぎました。よって、私は莉音より沙織派です。頑張れ沙織。

莉音の建国目的は、予想以上に壮大で、正直巻き込まれた側からするとはた迷惑じゃないかとも思ったけど、そうは思わないあたりが幼馴染なんでしょうかね。そういう絆に憧れます。ただ、国家レベルのお金を稼ぐまでにはまだまだやるべきことが多そうですし、これからどうなることやら。

今回はあんまり活躍していなかった恒太や柚先輩の商業の行く末、ライトノベルとしては珍しいジャンルの末路を楽しみにしています。今出てるのは5巻くらいまでだったかな。ゆっくり読んでいきたいと思います。

羽月莉音の帝国 (ガガガ文庫) Book 羽月莉音の帝国 (ガガガ文庫)

著者:至道 流星
販売元:小学館
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少女禁区

死んでもなお威力を発揮する父親の見えない檻から逃げようとする姉弟の話「chocolate blood,biscuit hearts.」と、家族に手を出さないことと引き換えに、鬼子と恐れられる少女の下僕になった少年の話「少女禁区」の2つです。

万人受けはしないと思うけれど、私はとても好みな作品だった。選評が暗に言っているように、多分若い人向け。でも、この作品の1番良くなかったのは、ホラー大賞のチラシの少女禁区のところで、担当オススメ台詞がさらっとネタバレしているところだと思う。これから読みたい思う人はあのチラシ読んじゃ駄目、絶対。

「choocolate blood,biscuit hearts.」は生まれた時から英才教育を施さた上に全てをスケジュール管理され、ようやく元凶の父親が死んだ後も「遺言」という形で、姉弟が苦しめられる話。少しずつ狂い始める2人に、未だ抜けきらない父親の影。姉が弟を守ろうとする姿が健気でした。ただ、檻から逃れた後に復讐をしようとして、手段がどんどん目的と乖離していくのが不気味で、姉弟の形がどんどんと崩れていき、最後はどうなってしまうのかと思ったところ、結果は凄い姉弟の形を見せ付けられてしまった。これはいい共依存。

今回は姉視点だったので、今度は弟視点が見てみたい……あ、うん。人気が出たらありえなくもないかもしれないじゃないか。続きはないと思うので、同じ時系列で是非。

「少女禁区」は何といっても、少女の恐ろしさと美しさが印象的だった。あざ笑うかのように少年を苦しめ、時折ポツリポツリと真理をはく。親を殺した鬼子と恐れられる面もあれば、祭りの子供騙しな遊びで上手くいかないところに憤慨するような可愛らしい面もあって、少年自身が少女の本性を捕らえかね、だけどそれすらも高見から見下ろすような少女がとっても哀しいんだ。

「形のないものは信じられない」という言葉は、読み終わった後に見直すと辛い。ちょっとくらい可笑しな形であっても、2人が幸せだったらそれでもういいじゃないか。「痛み」が辛さともう1つ言い表せない甘美な面も含むのが酷く淫靡だった。

というわけで、両方ともとても好みの作品でした。雨宮詩歌は、これで伴名練先生の大ファンになりました。次作待ってますよ、先生!

少女禁区 (角川ホラー文庫) Book 少女禁区 (角川ホラー文庫)

著者:伴名 練
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2010/10/23
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2011年3月11日 (金)

東京レイヴンズ1

霊的災害「霊災」が多発し、陰陽師たちが活躍する現代。陰陽師の名門・土御門家の次代当主・夏目と、その分家の春虎はずっと昔に一緒にいる約束をして、そしてそのままで終わっていた。夏目は次代当主への道を歩み、春虎は今ある仲間たちとの幸せを守る道を選んだのだ。ほのかな罪悪感を抱えつつも、いつの間にかすれ違っていた2人が夏休みに再会し……

完成度としては高いのだけれど、さらにもう一癖あるとなおよかった。大御所の先生ですし勿論上手いのだけれど、ちょっと「お手本」になりすぎている感じもしました。

春虎が北斗、冬児達と穏やかな生活をおくることを選んだ裏側で、夏目はひたすら身を粉にして自分を高め続ける。春虎自身も裏切った自覚はあるし、夏目も表面上は出さなくても春虎に裏切られた心を隠しきれない……じれったいような2人が夏休みに交錯し、そして夏祭りで出会った少女に人違いをされたことで選ばなかった道を進む春虎にハラハラしつつ、北斗との関係性はちょっと切なかった。男勝りだけど、やっぱり女の子な彼女はとても可愛かった。だから幸せになって欲しいと思うのは当然のことですよね。なんてことを書くと本編の都合上ニヤニヤしたくなるのですが。

一方、夏目を使って死んだ兄を生き返らせる禁術を使おうとする少女・鈴鹿の、年齢に見合わない実力と、その分背負ってしまった過去の重たさ、そして生じるちょっとひねくれた性格は、大人になりきれない子供らしさを含んでいて、春虎が関わっていってくれたことにほっとしました。本来はこの子も凄く可愛い子だと思う。それでも罪を犯さずにはいられない心情が辛いんだよね。

春虎、夏目、鈴鹿、北斗と皆が皆持っている譲れない心の決着は、よくまとまっている上に次巻への布石にもなっていて、学園物が大好きな私としてはかなりきになる。これで次巻購入を決定したといっても過言ではない。

春虎が自分でちゃんと道を選んでいってくれるので、読者としては迷いなくページを読む手をすすめられましたし、お決まりの鈍感さも楽しめましたが、少年漫画の主人公のように真っ直ぐなので、自分のほの暗さが浮き出てきて、劣等感があったのが楽しみきれなかった敗因かなと思います。仕方ないこととはいえ少し反省。

東京レイヴンズ1  SHAMAN*CLAN (富士見ファンタジア文庫) Book 東京レイヴンズ1 SHAMAN*CLAN (富士見ファンタジア文庫)

著者:あざの 耕平
販売元:富士見書房
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2011年3月10日 (木)

夢の上1 翠輝晶・蒼輝晶

地方領主の娘として平凡に生きるはずだったアイナが見初められて嫁にいき、波乱な人生を歩むことになる「翠輝晶」と、大抵のことが叶うから何かを望むことがない器用貧乏な男・アーディンが願ってしまった1つの夢の話・「蒼輝晶」が、人の夢の結晶を紐解く夢利きによって語られる話。

読み終わった後に思わずため息を漏らしてしまうほど、どっぷりと世界観にはまってしまった。特に「蒼輝晶」の話には心をうたれました。運命のめぐり合わせが生み出す奇跡と残酷さ、2つの側面の威力がすごい。おすすめです。

何故自分みたいな娘が……と半信半疑で嫁いできたものの、夫となるオープはとても素敵な人で、夢見ていた穏やかな生活がおくれると思った直後、もう1つの人生を歩むことになる、所謂運命に翻弄されたといってもいいようなアイナですが、その強さできちんと自分の進む道を選んでいく姿がとてもかっこよかったです。オープとは、時には衝突しながらも最後にはお互いを支えあっていける関係性で読んでいてとても心が暖かくなりました。

予期せずして身に咎を負わされて、それでも懸命に2人で生きる彼等の元にやってきた「王子」という名の運命によってまた平穏から離されることになるのですが、最後のオープの弟・エシトーファの台詞に驚きながらも、翠輝晶という物語自体はアイナという強さのおかげでハッピーエンドではなくても悪くないものだったのですが、その次の蒼輝晶がこれまたもう。

そもそもの身分は低かったものの、運と天賦の才能でのし上がり、貴族の娘・イズガータについていくアーディンの軽そうな態度と芯の想いの違いがじれったくて、切なくて! イズガータに惹かれながら、わかりすぎているといってもいいほどに身の程をわきまえていて結果的に次に進めない、ある意味で最高に不器用な彼がいとおしかった。幼い頃の御伽噺のような約束を忘れられなくて、ついに行動におこそうとしたときにもぐりこんできたものは、イズガータが求めていた好機で、自分を押し殺してしまうアーディンが本当に辛いです。

復讐を望み、自らを高めたイズガータも、目的を追い求めることを第一としつつ時折本音がぽろっとでる。アーディンに対する想いは一言では言い表せない程複雑で、1人の少女として彼女の望むべき道を歩ませてやることができたらどんなにいいかと何度思ったことだろうか。そんな中で、それをさせてくれないのは「運命」なんでしょうかね。

「翠輝晶」で語られなかった裏側の話にドキッとしつつ、最後の婚約話がアーディン達のほうからはこうなっていたのかと、真実を知ると凄く苦しい。誰が、何が悪いわけではないのに残酷な決断を迫られ、必死で自分を押し殺しあう2人がみていられなかった。自らが進むべき道を見据える彼等は強くもあり、だからこそとっても弱いんだと思います。甘えを持たないという点で。

最後にアーディンが飲んだ酒の味はどうだったのでしょうか。きっとしょっぱくてとても飲めたものじゃなかったんじゃないかとか考えると、妙に叫びたくなります。この馬鹿野郎!

たった2つの話でここまで魅せられるとは思わなかった。次巻も、雰囲気からしてイズガータ+エシトーファで今巻以上に波乱の予感がします。でも、それがいいんですけどね。

夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア) Book 夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア)

著者:多崎 礼
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菜々子さんの戯曲 Nの悲劇と縛られた僕

3年前の偶然の事故で、僕は体の自由を、菜々子さんは本当の名前を、そしてNは命を失った。事故の後遺症で体を動かすことができない僕のところに、菜々子さんは今でも毎日のように来ては話をしてくれる。だがある日、彼女が「3年前の事故は事件だった」といい始めて……

凄い私好みの小説だった。推理ものとして奇抜なわけではないのだけれど、見せ方が上手い。そして菜々子さんが実に可愛らしく陰険でした(誉め言葉)。

事故のトラウマから本当の名前を呼ばれると発作をおこしてしまう、そんな菜々子さんが毎日の出来事を普通に話しながらも、そこにはちらりちらりとほの暗い影が見え、極めつけに「事故ではなく事件だった」と話してからは、主人公が菜々子さんを疑い始め、どんどんと彼女の姿が見えてくるのが楽しかった。

主人公は、後遺症から言葉通り思考することしかできないから、彼女が犯人であるはずがないと考えながらも頭の片隅で冷静に計算をして、犯人はやはり……と考えてしまうその矛盾性が素敵だった。そしてそれなら自分の身を守るにはどうすればいいのかと、菜々子さんとの昔を思い出しながら考えていくのがいいんですよね。小学生とは思えないくらいに悪知恵が働くというかいい性格な彼女の本来の姿と、時折見える小学生らしさ。現在の彼女はどんな風になっているのだろうかと予測しつつ、最善を目指すその過程がとても上手かったです。

菜々子さんが主人公に対して持つちょっとした対抗心もまた可愛いんだよなあ。誰も見破れないはずのトリックを撃破されてむっとするような幼さと、主人公に対してアドバンテージを得るためにそろえた布石。そのギャップ感がまた陰険さを醸し出しているわけですが、事故の結論のところで更におとされてしまいました。本当に菜々子さんはいい性格をしていらっしゃる。私はこういう娘、大好きです。ある意味ではヤンデレといってもいいのかもしれない。

これの続きってそれはもう、菜々子さんの手のひらで踊らされるしかないような気もしますが、是非読んでみたいです。

“菜々子さん”の戯曲  Nの悲劇と縛られた僕 (角川スニーカー文庫) Book “菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕 (角川スニーカー文庫)

著者:高木 敦史
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2010/07/31
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